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声に導かれ、キンタは一振りの刀を見つける。
そして刀を手にした瞬間、あっという間に山賊達を片付けてしまう。
「何なんだよ・・・この刀・・・」
「表裏の波紋が揃った乱れ刃・・・間違いない、これ村正だ!」
妖刀と呼ばれた「村正」らしい刀を欲しがるコユキ。
しかし、キンタは自分にしか聞こえない声を持つこの刀に危険を感じていた。
押し問答している二人だったが、そこに覆面をした男が割り込んでくる。
「探す手間が省けたな」
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謎の男の攻撃に苦戦するキンタとコユキ。
だが、戦闘の最中にキンタの一閃が男の顔を掠める。
「お前・・・ハンジ!?」
どうやらこの男、キンタの知り合いのようであった。
顔を見られた男は動揺した様子を見せるが、
近寄ろうとしたキンタに捨て台詞を吐き、去る。
「村正はいずれ貰う」
と残して・・・
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所変わって―――断崖を背に人が立っていた。
「ハンジ!ハンジはまだか!」
厳格な初老の男・ゴンゾウが怒声をあげる。
それに呼応して現れるハンジ、顔には先程の傷がある。
「・・・必ずや、村正を父上の手に」
「ワシを父と呼ぶな。口を慎め」
賊の首領であるゴンゾウは「村正」の力を持って幕府崩壊を企む復讐者だった。
刀の行方を聞いた彼は自ら出向く事にする。
「・・・もう、父上とも呼ばせてくれませぬか」
ゴンゾウの背を見ながら呟いたハンジは、足早に父の後を追うのであった―――
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―――暫時後、コユキに詰問されたキンタは過去の事を話し始めた。
「俺は・・・徳川に忠誠を誓った・・・忍だった」
先ほどの刺客が昔の仲間だった事。徳川に里を滅ぼされた事。
忍の宿命に嫌気が差し、逃げ出した事・・・
全てを話し終えたキンタは、今までの自分の歩いてきた道をコユキに説き、
戦乱の元となる村正について考え直すよう勧める。
しかし、そこに―――
「言いたいことはそれで終わりか」
「あなたは・・・頭目!!」
「久しいな、キンタ。忍びの名を捨てた人間が坊主になるとは・・・滑稽だな」
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刀を渡せと要求するゴンゾウ。
しかし、黙ったまま答えを出さないキンタに痺れを切らした彼は刀を向ける!
「ゴンゾウ様!」
「お前は手を出すな。裏切り者はワシが斬る!」
身の丈を超える大刀を振るゴンゾウに苦戦するキンタだったが、
戦いの途中でコユキがハンジに捕らえられてしまう。
「コユキさん!」
「嫌っ・・助けて!」
「邪魔をしおって・・・まぁ良い。刀とこの娘の命・・・どちらを取るか考えるんだな」
高笑いをあげて悠然と去っていくゴンゾウに対して、
キンタはその場にただ立ち尽くすのであった―――
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『・・・ひどい有様だな』
「この声!もとはと言えばお前が!・・・いや、俺のせいか・・・」
声に反応したキンタだが、刀を置き、背を向けて歩き出そうとする。
『・・・また逃げるのか?』
「だって、しょうがないだろ・・・」
『・・・お前はそれで良いのか?・・・知ってるはずだぞ、お前は』
「村正・・・?」
『・・・命の重さを・・・平和の意味を・・・』
「命・・・平和・・・」
『・・・答えはお前の中にある』
暫くの静寂の後、刀を手に走り出すキンタ。その瞳に迷いは無かった。
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断崖にて―――
捕まったコユキは絶体絶命の危機に陥っていた。
ハンジに首筋に刀を当てられ、ゴンゾウから用済みと始末の命が下る。
その刹那―――ハンジの体が宙に舞った。
「何!?・・・貴様、ただの小娘ではないな・・・何者だ」
「別に・・・ただの刀鍛冶さ」
「・・・まさか・・・幕府の!!」
一瞬の隙にハンジから刀を奪ったコユキの顔に不気味な笑みが浮かぶ。
・・・猛然と、ゴンゾウに向かって襲い掛かった!
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予想外の出来事に驚いたゴンゾウであったが、辛くもコユキを気絶させる。
しかし、それと同時に飛び込んでくるキンタ。
「コユキさん!」
「今度は逃げなかったか・・・さぁ、答えを聞かせて貰おうか。この娘か、村正か」
「・・・頭目、もう止めましょう!太平の世にも生きる価値があります!
忍が人として生きる時代が来たんです!こんな刀、意味がない!」
「それがお前の答えか・・・よかろう。ならば、殺してやる!
平和などという下らん理想を抱いたまま死んでゆけ!!!」
戦いの火蓋が、切って落とされた。
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刀の力を借りて善戦するも、次第に追い込まれていくキンタ。
その内、鋭い一撃が腹に入り崩れ落ちてしまう。
刀を振り上げるゴンゾウ。死を覚悟するキンタが目を閉じる。
・・・だが、何も起きない。
「・・・なんのつもりだ、ハンジ」
振り下ろされるはずの刃ではなく、ゴンゾウの押し殺した声がキンタに届く。
恐る恐る開けた瞼の先に―――身を挺してキンタを庇うハンジの姿があった。
「父上・・・もうお止め下さい。忍の世は終わったのです。」
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「何を血迷い言を・・・
お前は忘れたのか、奴らの裏切りを!徳川がわしらにした仕打ちを!
それでもなお、わしを止めると言うのか!」
「復讐などなんになる!キンタの言うとおりだ。
里は滅び、忍は消えた・・・意味がないのです父上!」
「意味はなくとも・・・やらねばならぬのだ!!!」
ゴンゾウの刀が、ハンジの体を貫く。
そして全てを断切るかの如く、乱暴になぎ払う。
・・・まるで父と子という縁を裂くように。
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「ハンジ!」
「キンタ・・・約束・・・守れなかったな・・・すまない」
「ハンジ・・・ハンジ!!」
その言葉を最後に倒れ込むハンジ。
共に生き、共に死のうと約束した親友が目の前で殺された・・・
激情に身を焦がすキンタにゴンゾウが非情な言葉を吐く。
「馬鹿な奴め・・・下らん情にほだされよって」
「頭目・・・あんた、どこまで堕ちれば気が済むんだ!!」
「はっはっはっ!ワシが歩む道は修羅の道!誰にも邪魔はさせんわ!!
・・・例え我が息子だろうとな!!!」
「・・・この外道がぁぁぁぁぁ!!!!!!」
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お互いの全てをかけた決闘が始まった。
怒りに身を任せ斬り込むキンタに気圧されるゴンゾウ。
さっきまでの戦いとはまるで別人のようで、
傷を受けても怯まず攻めるキンタにゴンゾウは一瞬の隙を見せる。
キンタはそれを見逃さず、渾身の一太刀を浴びせる―――腕に入った!
斬られたゴンゾウはたまらず武器を取り落とし、
反す刀を別の腕で防ぐが、それすらも斬られてしまう。
「・・・死ねぬ・・・まだ死ねぬ・・・・・・徳川に一矢報いるまでは・・・絶対に・・・・」
満身創痍な中、それでも向かってくるゴンゾウに対して、
キンタは止めの一撃を放った―――
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崖から堕ちていくゴンゾウを一瞥すると、キンタはコユキに駆け寄った。
「コユキさん・・・コユキさん!」
「ん・・・キンタ・・・・・・二人は!?」
「・・・倒したよ・・・この手で」
「そう・・・今度は逃げなかったのね」
「・・・あぁ」
ハンジの亡骸に黙祷するキンタ。
それを見たコユキは察するが、かける言葉が見当たらない。
「・・・行こう」
暫く経ってからコユキの発した言葉に無言で頷くと、キンタはこの地を後にした。
―――途中で一度振り返り、この光景を目に焼き付けて。
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斯くして妖刀「村正」を巡る戦いは決着した。
どうやらキンタはこの「村正」を処分する事にしたらしい。
最初は反発したコユキもやがて納得したようだ。
二人はそれぞれ別の道を歩み始める為に歩を進める・・・はずが、別れ際
「・・・ねぇ、キンタ。お礼といっちゃなんだけど・・・・目閉じてくれない?」
「えっ!?コ、コユキさん!?」
「いいから早くっ!」
「コユキさん、駄目だよ!人が見てるかもれないし・・・」
と言いつつしっかり目をつぶるキンタ・・・そこにあの時と同じ笑みのコユキが!
「さよなら、キンタッッ!!!」
「・・・!!!ギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」
股間を蹴り上げられて絶叫するキンタを尻目に、
「村正」を奪ったコユキは正体を明かし、平然と駆けていくのであった。
めでたし、めでたし。※まだ終わりません
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涙目になりながら悪態をつくキンタの元にコユキが鬼の形相で戻ってくる。
どうやらこの「村正」・・・確認をした所、偽物らしい。
「・・・まさか、最初から偽物!?そんな・・・それじゃ私の苦労は・・・」
「あのー・・・コユキさーん?」
「・・・イーーーーヤーーーーー!!!!」
泣きながら去っていくコユキを呆然と見送るキンタ。
「・・・行っちゃった・・・しかし、これが偽物だとはねぇ・・・
おい村正、お前本物か?・・・答える訳ないか
・・・あの時聞こえた声も、きっと気のせいだったんだな・・・
でも・・・ありがとうよ。村正」
礼を述べて刀を置いていくキンタの背に声がかかる。
『・・・さらばだ。キンタ』
立ち止まるキンタ。だが、すぐに歩き出す。
振り返らずに進んでいくキンタの口元には穏やかな笑みが浮かんでいた。
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